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大阪地方裁判所 昭和57年(わ)3583号 判決 1982年10月25日

裁判所書記官

上田隆敏

本店所在地

大阪市港区弁天四丁目六番二八号

富士工業株式会社

(右代表者代表取締役平尾真治)

本籍

大阪市港区桂町三丁目一七番地

住居

同区弁天四丁目六番二八号

会社役員

平尾真治

昭和一一年一一月三日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官鞍元健伸出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

一、被告人富士工業株式会社を罰金三、〇〇〇万円に、被告人平尾真治を懲役一年六月に、各処する。

一、被告人平尾真治に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人富士工業株式会社(以下「被告会社」という。)は大阪市港区弁天四丁目六番二八号に本店を置き、金属切削およびその原材料の販売等を目的とする資本金四〇〇万円の株式会社であり、被告人平尾真治は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人平尾は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空給与を計上し、よって得た資金を仮名の定期預金として留保するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五三年一〇月一日から同五四年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八、五六八万八、〇七七円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年一一月三〇日、同区磯路三丁目二〇番一一号所在の所轄港税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二、四五七万二、七一〇円でこれに対する法人税額が八七六万八、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三、三二一万四、九〇〇円と右申告税額との差額二、四四四万六、四〇〇円を免れ、

第二  昭和五四年一〇月一日から同五五年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二、三一四万三、〇二二円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一一月二八日、前記税務署において同税務署長に対し、その所得金額が二、五〇二万五、五八六円でこれに対する法人税額が八八七万八、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額四、八一二万五、四〇〇円と右申告税額との差額三、九二四万七、二〇〇円を免れ、

第三  昭和五五年一〇月一日から同五六年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億六、二五一万九、九一二円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一一月二六日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二、二五九万七、〇二一円でこれに対する法人税額が八〇五万一、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額六、六八一万八、九〇〇円と右申告税額との差額五、八七六万七、三〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人平尾真治の当公判廷における供述

一  同被告人の検察官に対する供述調書

一  収税官史の同被告人に対する質問てん末書一三通

一  平尾悦子の検察官に対する供述調書

一  収税官史の平尾悦子(二五通)、柏木たみ(二通)、上里久子、石丸一夫、三浦恒に対する各質問てん末書

一  収税官史作成の査察官調査書二一通

一  大阪法務局登記官作成の法人登記簿謄本

一  被告会社作成の法人税確定申告書謄本三通

一  収税官史作成の脱税額計算書三通

(法令の適用)

被告人平尾真治の判示第一及び第二の各所為は、いずれも行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項、裁判所においては改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条によりいずれについても軽い行為時法の刑によることとし、判示第三の所為は、右改正後の法人税法一五九条一項に該当し、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人平尾真治を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

被告人平尾真治の判示各所為は、いずれも被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により判示第一及び第二の各罪につき同じく改正前の法人税法一五九条一項の、判示第三の罪につき右改正後の法人税法一六四条一項により右改正後の同法一五九条一項の、罰金刑に処せられるべきところ、情状により法人税法一五九条二項をそれぞれ適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金三、〇〇〇万円に処することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 金山薫)

別紙(一)

修正損益計算書

自 昭和53年10月1日

至 昭和54年9月30日

<省略>

別紙(二)

修正損益計算書

自 昭和54年10月1日

至 昭和55年9月30日

<省略>

別紙(三)

修正損益計算書

自 昭和55年10月1日

至 昭和56年9月30日

<省略>

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